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  • 執筆者の写真石塚

不確実な時代を生きるための「陽明学」と「学問のすすめ」 藤野貴教 × 河野英太郎

昨夜、下記のイベントに参加してきました。


「河野英太郎×藤野貴教 最近の興味関心を放談する会」

2018/10/17 (水) 18:00 - 20:00

KOKUYO東京ショールーム5F「スタジオ」


働きごこち研究所  藤野 貴教さん
働きごこち研究所  藤野 貴教さん

フジノンは最近、瞑想にはまっているようでした。気持ちよさそうに、自分の心地よい感覚と、それに至る経緯を話していました。瞑想などで変性意識に入っていける人にはとってもよく分かる話だと思いました。変性意識に入ったことのない人が聞いていても、中心にリラックスして落ち着いた人がいると自然に引き込まれて、会場全体がナゴムなーと感じます。


フジノンの話で最初に残ったのは「テクノロジーで倫理が変わる」という内容の話。


いま中国ではアリババグループが提供している決済サービスの「アリペイ(Alipay、支付宝)」やテンセントグループが提供する「ウィチャットペイ(WeChatPay、微信支付)」は、日常的な支払の方法になってきています。


この決済サービスは、リアル店舗での飲食や日用品の買い物だけでなく、インターネットでの買い物、電車や飛行機、ホテルの予約と決済、公共的な納税や年金の授受などにも範囲を拡大していっているようです。あと中国では誕生日などの記念日に少額のお金を渡す風習があるようですが、それも決済サービスでやりとりしている人もいるようです。


決済システムのアリペイ「芝麻信用」という付随機能がついています。芝麻とは中国でゴマのことなので、ゴマ信用という呼び名が広まっています。


付帯機能の芝麻(ゴマ)信用では、決済システムを利用した支払い履歴によって、どのくらいの信用があるのかを可視化することができます。


評価の軸は5つ。


1、身分特質(年齢、学歴、職業などなど)

2、履約能力(過去の支払履行能力など)

3、信用歴史(クレジットカードの返済履歴など)

4、人脈関係(SNSなどの交友関係など)

5、行為偏好(旅行などの趣味面の際立った特徴など)


それぞれの領域で、5角形を形成して、合計値でステータスを表示します。


950~700「信用極好」

699~650「信用優秀」

649~600「信用良好」

599~550「信用中等」

549~350「信用較差」


中等、良好、優秀が50点と幅が狭くなっているので、ここで消費行動に影響を与える戦略があるように感じますね。信用が高い人しか使えないアプリやサービスがあったり、ビザの取得が容易になったり、何よりも人に見せて、すごいだろーって感じですかね。


フジノンの話では、この芝麻(ゴマ)信用で、国民の行動が変わり始めているとのことです。芝麻信用のスコアは月に1回更新されるようで、1ヶ月間の自分の行動内容を自制するようになるようです。スコアの算出に使うデータや、アルゴリズムは変化しているようなので、基本的に倫理的と思われる行為をしてしまうようです。フジノンはまず行為が変わり、次にそれが習慣となり人格を変えていくという流れがあると指摘していました。


うむうむ。


ちょっと、芝麻(ゴマ)信用のことを調べてみると、企業の採用時の評価として使われたり、「百合網」という結婚相手のマッチングサービスに使われたりしていました。うーむ。これをアプリの力によって、道徳的行為が習慣化する。そして、その後に上にのって立つさらなる自由を目指すという方向になるのかなと思いました。



続いて、フジノンがだしたキーワードは「陽明学」と「万物一体の仁」です。


陽明学は後からつけられた名称であって、陽明学を創出をした王陽明(おうようめい)自身がつけた名前ではありません。王陽明は朱子学、そして大元の儒教から多くの影響を受けています。


儒教は孔子がまとめあげた教えで、その大きい目的は「修己治人(しゅうこちじん)」です。まず己(おのれ)を修め、人を治めていこうということです。そして、そのベースには「徳」があります。


朱子学は儒教から派生したもので、朱熹(しゅき)がまとめ上げたものです。朱子学の目的は儒教と同じで「修己治人(しゅうこちじん)」としながらも、その方法論を体系化しました。そこで重んじたのは「理」です。朱熹は理を形而上のもの、「気」を形而下のものとして互いに関係しあうとしました。


「理」はとても重要なものです。「理」の重要さに気づき、朱子学を自らの学びとして取り入れるのは良いと思うのですが、外から自分にフィットしない「理」を強要されると窮屈になっていきます。朱子学が中国において国家的なプロジェクトになり、「知識を身につけろ、勉強しろ」という集合意識が強くなり、他の説なども排除されるようになっていくと、次第に反発がでるようになります。朱熹は、自己を磨くことより社会との関係の重きを置く功利学派と呼ばれる人らを批判しているので、朱熹がそうしたわけではないでしょう。


そこで登場してくるのが陽明学です。


王陽明は朱子学が目指すような良い人間になるために必要な「理」は、身につけるものではなくて、すでに自分の中にあるだろうと言います。それを「心即理(しんそくり)」と言います。


西洋的な考えには、「主知主義(しゅちしゅぎ)」と「主意主義(しゅいしゅぎ)」というものがあります。主義という言葉を使うのは、いったん分かりやすくするためであります。分かったあとで、ツールとしては別に対立することでもないなーと思って頂ければ幸いです。


主知主義とは知性や合理性、計算可能性を大切にする考え方です。その時代、朱子学がそのような立場に置かれてました。主意主義とは世の理不尽や不条理をある程度肯定的に捉える感じです。主意主義は不条理があることを肯定的に捉えるため、逃げ場がなくなると神秘主義に行く傾向もありますが、それは個人的には生きるために必要なことだと思います。それが陽明学だと思います。


そして、その王陽明が残した「万物一体の仁(ばんぶついったいのじん」です。人も含めた全ての万物は根元が同じ。そしてそれを儒教のベースの感覚質である「仁(じん)」と結びつけました。仁は儒教における徳のカテゴリの中の一つで、意味としては他者に対する愛や情のことです。つまり万物が一体となっていることに、その状態に愛や情も一緒に存在しているような感じでしょうか。


フジノンは、瞑想しながらそんなところに行っていたようです。いいじゃーん。



続いての話者は、『現代語訳 学問のすすめ』の著者である河野 英太郎さん。



河野 英太郎さん
河野 英太郎さん

最初にココロにとまったのは「VUCA(ブーカ)」。下記の頭文字をとった言葉です。


・Volatility 変動性

・Uncertainty 不確実性

・Complexity 複雑性

・Ambiguity 曖昧性


不確実で安定しない時代に、何を指針にしていけばよいのか。もともとは軍事的に使われていた言葉のようですが、ビジネスの世界にも「VUCA」にどう対応していけばよいのか戦略的に語るメソッドがでてきているようです。


その答えの一つが「学問のすすめ」でした。河野さんは、1876年に書かれた福沢諭吉の「学問のすすめ」を現代語として編集・執筆しなおしました。


自分は福沢諭吉の「学問のすすめ」を通読したことがなかったので、とても参考になりました。メモとして、学問のすすめのトピックスを自分なりに編集したものを記しておきます。


1、自由・独立・平等

2、実学の推奨。法治主義に基づく近代市民国家へ転換。

3、一身独立すると、一国独立する。

4、在野から知識人層が現れ、民間を先導する。

5、明治七年一月一日の詞。慶應義塾の新年会の挨拶を文章化。

6、政府を社会契約説に基づく市民政府と定義し、法治主義の重要さを説明。

7、政府が圧政を行なった場合、武力抵抗権を否定。非暴力主義。

8、江戸期の社会秩序の基軸をなした主従、男女、親子の儒教的上下関係を不合理な旧思想として否定し、男女同権論を展開。

9、学問には個人的・社会的の二種類の目的がある。生活の独立と社会進歩への貢献。

10、日本の後進性を解決する責務は知識人にあり。大局的な学問を忘れずに。

11、儒教的秩序を基礎とする国家観の不合理を論証。身分制度に基づく封建社会の否定。

12、言葉の重要性。日本になかった弁論術の観念を提唱。

13、人間の不道徳のうちで最大は怨恨。怨恨が生じる原因は鬱屈。

14、長期的な計画には、自己を客観的に見ることと棚卸が必要。他者を監督する場合は保護が欠けた場合は悪となる。

15、事物を疑いて取捨を断ずること。

16、独立には物理的と精神的の二種がある。己評価と、仕事の実力の不一致は悪。

17、世間的な評価は重要。見た目の印象は大事。愛想のいい顔つきや話し方、そのために研究・努力をすべし。


参考元

https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%AD%A6%E5%95%8F%E3%81%AE%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81


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