top of page
  • 執筆者の写真石塚

「モラル・トライブズ(ジョシュア・グリーン)」

ある人に紹介してもらった『モラルトライブス』。倫理を構造的に考えるキッカケになる。

本書にこんな一節がある。


「道徳は《私たち》を《私》より優先させる装置としてだけでなく、《私たち》を《彼ら》より優先させる装置として進化した」


《私たち》が、《私》や《彼ら》よりも優先される判断モードがあるのだ。


言語化されたものを落ち着いて受け取れば、構造を認知できるが、このモードが発動するような素早く判断を要求される場では、オタオタしていると《私たち》から《私》は弾かれてしまう。だからすぐに情動で判断を下すことしかできない。これは《私》自身の身を守るためでもある。


《私》と《私たち》の問題だけでも根深いが、《彼ら》よりも、《私たち》を優先するとき、民族や宗教や国家を巻き込む深い対立が起きる。


著者のグリーンは、この素早く情動で判断を下す道徳モードの他に、もう一つの道徳モードがあると言う。


それは、論理的思考によって生活の実利をベースにして考える功利主義的なモードだ。

グリーンは情動で反応するオートモードを「早い道徳」、論理的思考によって功利主義的に考えるマニュアルモードを「遅い道徳」と呼んでいる。


本書で面白いのは、二つのモードの状態を、それぞれfMRIという装置を使って脳血流を計測した実験結果も報告されているところだ。


オートモードの時には、前頭前野腹内側部(VMPFC)と扁桃体の活動量に変化があり、マニュアルモードの時には前頭前野背外側部(DLPFC)の活動量に変化があったという。

感情とどう付き合うのか、メタ認知をどうコミュニケーションに用いるのか、自分自身を考えるのに、自分と他者を考えるのに、倫理と脳機能いう切り口で、色々なことが構造化される。




閲覧数:10回0件のコメント

最新記事

すべて表示

ポエム1

内に潜んでいた希望の能力が外に出てきたので、オレは変わる。 失望や絶望から逃げなくとも、それをキャッチした上で生きていける。 人が好きになる。 何かを始める時の、最初のポジショニングが、どこか分かった。 ただこれらは予感の世界なので、罰や倫理や死を身体で受け止めていく。 すごく簡単に言うと、オレは泣き止んだ。

bottom of page