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執筆者の写真石塚

「21世紀の不平等(アンソニー・B・アトキンソン)」

更新日:2018年9月19日

アンソニー・B・アトキンソンの「21世紀の不平等」を読んだ。


労働者がお金や経済を自然法則のように考えて自分たちの力ではどうしようもないものと考えてしまうと状況を変えようという力が働かなくなる。市場経済はコントロールできないものではなくて、効果のある具体的な政策はたくさんある。不平等はどうしようもない力によって支配されているわけではなくて丁寧に分析していけば捉えて、変えていけることができるという主張がベースにあった。


戦時中と戦後の数十年に格差が縮む傾向があるだけで、それ以外の期間は「r(資本収益率)>g(経済成長率)」の状態。状況を単純に説明するためにこのような式でざっくりと表現されていが、アトキノソンの提言ではその是正のために、テクノロジーの進歩や教育に関するところにも及んでいる。「イノベーションは雇用が増えるような指向性を持たせる」、「相続税の仕組みをブラッシュアップしてすべての人が成人の時にある程度の資本給付が受けられるようにする」。


本書の中で、「ポール・クルーグマンが競争力というのは国の経済に適用したら無意味な言葉だと述べているのを見てホッとした。」という記述には納得した。国家ではなくて、企業活動をしっかりと見ていかないと経済の本質が見えなくなる。そこで繋がっていくのが、ソブリン債だ。ソヴリンウェルスファンドとは各国の政府や中央銀行など国営・公的な機関が運用する投資ファンドのこと。為替介入によって積みあがった外貨準備を原資とする国と、国営企業などが上げた利益(国益)を原資とする国がある。クウェートやドバイ、カタールなどかなり昔から運用が始まっている。これは実体経済とリスクがリアルタイムでリンクしているので変なお金のねじれがないと感じた。


日本の厚労省もジニ指数をつかって所得再分配調査を行っている。昭和59年の調査以降は格差が広がる傾向が続いていて、平成23年の調査は格差が過去最大。この結果に対して、厚労省はマスコミに「所得が少ない高齢者や単身者の世帯が増加したのが格差拡大の背景にある」と答えているよう。




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