カピル・ラジさんの著書「近代科学のリロケーション」が発刊された。そして今日、日仏会館にてカピル・ラジさんを招き、書籍の解説を含む講演会が行われた。
近代科学はヨーロッパが中心になって作り、学問はヨーロッパから世界に向けて発信され続けていると思われがちだが、カピル・ラジさんは、このような科学史観に対して、東インド会社を中心とした分析から、実際の交流の現場は違っていたと話す。
カピル・ラジさんは、ジョセフ・ニーダムさんの著書を引用し、中国からのヨーロッパへの影響も指摘している。アジア側からヨーロッパに技術や考えが受け継がれた事例はいくつもあり、技術や思考は循環しているということだ。こういった考え方は、世界を一つと見る、より包括的なものの見方を提示してくれる。なにはともあれ、カピル・ラジさんはアジアに開いてくれている希少な知識人ということが分かった。
カピル・ラジさんの第一の主張 ・科学はヨーロッパで発達し非ヨーロッパにおしつけられたという見方は誤り。 ・非ヨーロッパにもヨーロッパと別の文化伝統があり、その要素のうちからヨーロッパの科学に採用されるものがあった。
第二の主張 ヨーロッパのアカデミズムよりも、東インド会社などの調査業務、ビジネス、マネジメントの現場において、学問的な思考がよく使われていた。そこからひとつの学問としてまとまっていくこともあった。植物学、会計学、地理学など。
第三の主張 カピル・ラジさんが主に分析したのは東インド会社を中心とするインドとイギリスの交流。インドとイギリスが一緒になって作ったものはいくつもある。 ・インド人の経験を生かした航海地図 ・ヒンドゥー法やイスラム法の分析と翻訳 ・フォート・ウィリアム・カレッジという研修機関。 (西洋の学問や、インド語や法がミックス) ・ヒンドゥカレッジ(ヒンドゥー教徒のエリート教育機関) ・インド大三角測量局 (中央アジアへの潜入探検・測量を担当)

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