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  • 執筆者の写真石塚

緋色と水縹色

能を専門に扱う 檜書店に来店。


石牟礼道子さんが最後にたどりついた能に出会う。


能装束を創作するのは志村ふくみさん。


鎖国の要因にもなった、日本最大の内乱である島原の乱。その首謀者とされる天草四郎が演目「沖宮(おきのみや)」の主人公。石牟礼さんと志村さんが遺言ともいうべき、人生の最後に創作した新作の能だ。


志村さんの手に成った御作品は、色の精霊でもあり、いのちの秘光でもあり、魂が発色したような気品を感じます。草木染の色を拝見していると、色の精霊たちのはなやぐ遊びに誘われるようでございます。


――石牟礼道子(2016)「色の精霊たち」『志村ふくみ―母衣への回帰―』



場面は 島原・原の廃墟跡、崖めいた石垣の一隅に、彼岸花が咲くところ。戦に散った天草四郎が霊として現れ、戦で生き残った幼い少女あやを 海の底の「沖宮」に連れていく物語。


この能が出来上がるまでの二人のやりとりがすごい。

みみをすます やま うみ たましいのはな ひのふね るるるるるんるん しゃららららーら あまごい りゅうじん あや しろう ははのくに おきのみや ふくちゃん みっちゃん


祈りとは聞くことから始まる。遠くから聞こえる何かを。二人は「超越的な感覚質」なんて言わない(笑)。自分のセンスに無さに、喋ることを止めたくなる。

石牟礼さんには「祈るべき 天と思えど 天の病む」という句がある。

すごい。言葉がでない。

絶望の中から出てくる生の鼓動。

今日、初めて「水縹色(みはなだいろ)」を知った。

色ってとても楽しいものなんだな。




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