昔、日本免疫学会で本庶先生が講演された後に取材したことあります。学会で本庶先生は創薬現場の環境の悪さをめちゃ怒ってましたが…
新聞などで、「免疫療法」という文字が躍っているので、ちょっとメモがてらに書こうかなと。
人の身体には、がん細胞やウイルスなどを攻撃する免疫細胞がもともと備わっています。
しかし、がん細胞は免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みをもっています。免疫細胞にブレーキがかかる仕組みには「PD-1」と「PD-L1」という物質が関係しています。
免疫細胞が持っているのが「PD-1」、がん細胞が持っているのが「PD-L1」と考えて下さい。
がん細胞は「PD-L1」を発現させて、免疫細胞の「PD-1」と結合させようとします。結合すると、免疫細胞はがん細胞を攻撃するのを止めてしまうのです。
ここまでは、身体の中で起こっていることです。
本庶先生らは、この仕組みに気づき、「PD-1」と「PD-L1」を結合させない薬の開発のベースを作りました。この研究によってできた薬がオプシーボです。オプシーボは「PD-L1」より早く「PD-1」と結合して、免疫細胞の攻撃を維持します。
免疫の機構のチェックポイント(PD-L1とPD-1の結合)を阻害するので、オプシーボは「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれています。
現在、医療保険でオプシーボが適用できる がんの種類は、悪性黒色腫(メラノーマ)、肺がん、頭頸部がん、胃がんです。しかし、それぞれ投与の基準は細かく決められています。
オプシーボは4年前に保険で使えるようになったとき、薬価は1瓶(100mg)で約73万円でしたが、今年の11月には17万円にまで下がることになっています。ノーベル賞をとったことで、投与を望む声をさらに増えると思いますが、効果と副作用が、さらに詳しく分かってくると思います。
そして、ここでちょっと心配なのが、ネットにでてくるような免疫療法と、「免疫チェックポイント阻害剤」は違うということです。
色々なクリニックが、免疫療法と称して治療をしていますが、それは「免疫チェックポイント阻害剤」ではない場合がほとんどです。ぬーん。
国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」から免疫療法の箇所を引用してみます。(https://ganjoho.jp/…/di…/treatment/immunotherapy/immu02.html)
以下引用 ----------------------------------------- 免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤を含め、治験や先進医療での検討が進められています。表5にがん免疫療法ガイドラインに記載があり、まだ国で承認されていない免疫療法(広義)の種類を記載しています。これらは「効果があるかどうか」や「安全かどうか」についてはまだ確認されていませんので、慎重な確認が必要です。例えば、がんペプチドワクチンでは治験(PhaseⅢ)を行ったところ標準治療に比べて明らかな有効性を示すことができなかったとの報告があります。
自由診療で行われる免疫療法(広義)では慎重な確認が必要です
「免疫療法(広義)」は発展途上の治療法で、有効性(治療効果)が科学的に証明されていない免疫療法も多数あります。効果が明らかになっていない治療法は、保険診療として認められていないことから、患者が全額治療費を支払う自由診療として行っている医療施設もあります。一口に「免疫療法(広義)」と言っても、効果が証明され保険診療になっているものと、効果が確認されていないものがありますので慎重な確認が必要です。
患者さんやご家族が、標準治療が使えなくなって治療の選択に困り、自由診療でのがん免疫療法(広義)を選択肢として考えるときには、その選択をする前に公的制度に基づく臨床試験、治験などの研究段階の医療に熟知した医師にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。
セカンドオピニオンを求める医師がわからない場合には、ご自分の担当医やがん診療連携拠点病院などに設置されているがん相談支援センターにご相談ください。 -----------------------------------------
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